和太鼓の構造と大きさ
和太鼓の構造は、胴と皮とそれを留める鋲(びょう)や紐(ひも)などで大変シンプルな作りとなっています。しかし、胴や皮の素材や大きさなどでさまざまな種類のものがあり、太鼓の音も違ってきます。
同じ種類で同じ大きさの太鼓でも、ひとつひとつが違う音色を持っていて、ひとつとして同じ音色の太鼓はありません。
また、季節によって、その日の天気、気温、湿度によって、打つ場所によって、打つバチの種類によって、打ち手によっても太鼓の音色は変化する繊細な楽器です。さらに、造られたばかりの太鼓はかたい音がしますが、打ち込んでいくうちにしだいに音色が低くなってきて、まあるい音になってきます。
太鼓の大きさは、バチで打つ皮の部分(鼓面)の直径で表されます。よく尺5の太鼓とかという表現をしますが、これは鼓面の直径が一尺5寸の太鼓ということです。一尺は30.3cm、一寸は3.03cmなので、1尺5寸の太鼓であれば、打つ面(鼓面)の直径が約45cmの太鼓ということになります。
和太鼓の種類
【長胴太鼓(宮太鼓)】
舞台演奏や盆踊りなどのお囃子、お祭りなど色々な場面で目にすることができます。多くの和太鼓グループはこの太鼓を使用して演奏しています。
1本の木をくり抜き両面に皮を張り、鋲を打ち仕上げています。和太鼓の中でも最も力強い音がでる太鼓です。
胴の材料は欅(けやき)が好まれるのですが、高価なため栃(とち)、楠(くすのき)、栓(せん)、花梨(かりん)・タモ・松・桜等を使用した太鼓もあります。また、欅を張り合わせて胴にした太鼓(集成材による欅胴)も販売されています。
欅は木目が美しく、堅くて耐久性があり粘りがあるため、鋲がしっかりと木に食い込んで抜けず、バチで縁をたたいてもへこんだりヒビが入りにくいなどの特徴があります。また、欅胴の太鼓は音が力強く、響きもよいため最も高級な材質であるといわれています。
※私たちは、欅をくり抜いた胴の太鼓が欲しかったのですが、高価なため、欅を張り合わせて胴にした太鼓(ハイテク太鼓)を購入しました。購入してから30年近くたちましたが、今でも皮を張り替えることなく舞台演奏に使っています。
欅胴のハイテク(張り合わせ)太鼓
【締太鼓】
くりぬいた胴に「鉄輪」と呼ばれる金属のリングで張った皮を縄(なわ)や紐(ひも)で締めた太鼓となっています。
胴は長胴太鼓と同じように欅(けやき)が好まれますが、松や栴檀(せんだん)の胴もあり、外の面は漆塗りで、美しい蒔絵をほどこしてあるものもあります。
皮は牛皮が一般的となっており、皮面の周縁に、縄や紐を通す10個の穴があいています。
胴の両端に表皮と裏皮の同形の皮面を当てて、縄や紐を穴に通して締め上げてから、さらに横にかけて締め付けています。
※私たちが行っている獅子舞の伴奏にもこの締太鼓を使っています。
【附締太鼓】
一番薄いのが並附(なみつけ)、その後は二丁掛・三丁掛・四丁掛・五丁掛と数字が大きくなるにつれリングの部分が厚くなります。数字の低いものが軽やかで、数字が多くなるにつれ革が厚く張りも強く、硬い音質になります。紐で締めるものもあれば、鉄の骨組みをつけ、ボルトで締める「ボルト締め」や「ターンバックル」で締めるものもあります。ボルトの締め具合によって好みの音色を創ることができます。
(参考)リングの太さ(標準寸法)
並附 約11mm、二丁掛 約19mm、三丁掛 約23mm、四丁掛 約26mm、五丁掛 約29mm
※私たちは、三丁掛の附締太鼓(ボルト締め)を使っています。ボルトの締具合によって簡単に音質を調整することができるため、重宝しています。長年叩き込んだせいか片方の皮が破れてしまいましたが、片方だけ皮を購入し、快適に使っています。
【桶胴太鼓】
「桶胴太鼓」の発祥は東北地方で、これは桶を作る職人が東北地方に多く、桶の文化が確立されていたためですが、現在では全国にひろがっています。
「桶胴太鼓」は、「長胴太鼓」に比べて安価で軽くさまざまなサイズが取り揃えられています。太鼓の台に乗せて据え打ちで使うものや、ストラップをつけて、肩にかけて担ぎながら打つ「かつぎ桶太鼓」と呼ばれるものがあり、自由に動き回って演奏することができるため、演奏に踊りの要素も取り入れることができます。
音質は「長胴太鼓」より軽く、パワーという点では劣りますが、紐でチューニングすることが可能で、さまざまな使い方を工夫することができる楽器です。
【平太鼓】
胴の長さより、皮を張っている面の直径が長いものを平太鼓といいます。この太鼓の最大の特徴は、胴の短さと音質です。長胴太鼓のような長い余韻が残らず、低音気味な音質となります。
【団扇(うちわ)太鼓】
胴がなく、円形の枠に膜を張ったただの太鼓です。形状が団扇に似ていることから「団扇太鼓」と呼ばれています