江戸芸能に使われた太鼓

江戸芸能に使われた太鼓

能楽の大成

南北朝時代から室町時代にかけて、観阿弥、世阿弥親子によって能楽が大成しました。能楽は、田楽や猿楽能の長所を摂取して再構築されたものです。

能楽の伴奏には、能管、小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)とともに、締太鼓が用いられました。この形の太鼓はもともとは猿楽能に用いられいたもので、中国・朝鮮から伝来した腰鼓(ようこ・胴の中央がくびれた太鼓)を原型として改良されたと思われます。


能楽のお囃子使われた(※左から順に)「太鼓(締太鼓)」、「大鼓(おおつづみ)」、「小鼓(こつづみ)」、「能管(笛)」

出展:「文化デジタルライブラリー」ホームページ

中央部がややふくらんだ太鼓(締太鼓)の胴には朱塗りで、華やかな蒔絵がほどこされていることも多くありました。

調緒(しらべお・締太鼓に使うロープのこと)の色は紅が一般的ですが、江戸時代になると、名人に限って紫色を用いることがゆるされたということです。

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歌舞伎の確立

安土桃山時代の女性芸能者である出雲阿国(いずものおくに)が江戸時代に入り、『カブキ踊り』という念仏踊りの興行を行い、大評判になりました。

阿国は『カブキ踊り』に演劇の要素を加えて『阿国歌舞伎』とよばれる演芸に発展させ、元禄期になると現在のような劇の要素を主とする歌舞伎が確立されました。

歌舞伎の音楽は、三味線や小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)などが用いられますが、演奏の中心となるのは太鼓類で、大太鼓、平釣太鼓、大拍子(胴の長い締太鼓)、団扇太鼓(柄のついた枠に1枚の皮を張った太鼓)などがさまざまな場面で使われました。


歌舞伎に使われる太鼓類

写真:東京都江戸東京博物館 / 撮影者:瀬尾直道

出展:「和樂」ホームページ

歌舞伎では、舞台の雰囲気づくりや情景描写の効果音などに黒御簾(下座)音楽とよばれる囃子が演奏されます。このお囃子は、舞台の下手(客席から見て左側)にある黒御簾の中で演奏を行うため客席からは見えません。

太鼓類の中でも大太鼓は、お囃子だけでなく、風や雪、雨、波の音など自然の情景を表現する擬音楽器の役割も持っており、最も重要な役割を担っています。

演奏する太鼓の構造は、大太鼓、平釣太鼓が鋲止め太鼓で、大拍子が締太鼓となっています。

鋲止め太鼓も身近な存在に

このように、江戸時代に入って、以前から使われていた締太鼓に加えて鋲止め太鼓も芸能に取り入れられ、一般にも広く普及するようになりました。

そして鋲止め太鼓は、歌舞伎の黒御簾(下座)音楽だけでなく、祭のお囃子、盆踊り、相撲や芝居のふれ太鼓など、さまざまな場面で使われ、庶民にとってたいへん身近な存在となりました。

このように、和太鼓は、江戸時代に締太鼓や鋲止め太鼓を使った芸能が盛んになり、江戸囃子や江戸里神楽、風流踊りなどに取り入れられた結果、『江戸芸能』という形で新たな発展をみることになりました。

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